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2004/09/11

イリーガル・マインド ・4・

昼時の雑踏の中、クロムとアイリスの後を歩きながら、グレイスは静かにユイトに話しかける。

「なぁ…本当にあの娘なのか?」
「あぁ、間違いない。アイリス・ウィッシュハート…偶然にもクロムと一緒にいてくれるとは…警戒心を解く手間が省けて助かったね」

戸惑いと躊躇いを含むグレイスの声に、ユイトはなんでもないことのように返す。
しかし、それはグレイスに更なる戸惑いを感じさせた。

「…そうか…」

その戸惑いと、違和感にも似た感覚に、まるで自分をごまかすようにそう呟いた。

「グレイス、わかっているだろう?君が女の子に対して手荒なことをするのに抵抗があるのはわかっているけど、これは僕たちが幸福になるための手段なんだ。躊躇っている場合じゃないよ」
「…わかってるよ」

苛立ったように応えると、グレイスは煙草を取り出して、火をつけた。
その紫煙は、彼の歩く道をたどっていく。
彼のその視線の先には、懐かしい友人と、今彼らが必要としている彼女がいた。

「ふーん、クロムってスケボー乗るんだ!」
「あぁ、今は店に調整に出してるけどな」
「私後ろに乗りたいなー!いい?」

再び上目遣い炸裂!
――それ、反則…
クロムは軽い目眩を覚えながら、苦笑する。
これが計算づくならまだ対抗できるが、どうも天然らしい。

「…いいけど、でもなー、俺パワーないしー。君、おっこっちゃうかもね」
「あっははは、うっそくさー!超強いのに!!」

――自分が少し貶められていることにもあまり頓着しないし…
クロムは再び苦笑する。
天然には対抗できない。

視線を上にずらすと、目当ての店の看板が目に飛び込んできた。
後ろを振り向くと、グレイスとユイトは遅れ気味に歩いているのが見えた。

「おーい、グレイス、ユイト!遅いぞ~!」
「おいてくぞ~!」

すかさずアイリスが続ける。

「お前、おごってもらうんだろ?」
「あっ、そっか。はーやくー!!」

現金な奴、と少し笑ってみても、やはりなんだか他の男におごらせると言うのは面白くない。
――特定の意味はないけどな!
と、自分に言い訳をしているような気もするけれど。

「…俺がおごってやってもいいんだぜ?」
「…んん~~?」

挑発してみたが、アイリスはわからない、と言うように首をひねる。
意味が通じなかったことに、ほっとしたような、がっくりきたような…

「ははっ、ニブチン!」
「えぇ~、なにそれ!」

笑って見せると、アイリスはふくれっつらでクロムを軽く睨んだ。
その顔がおかしくて、笑ってしまう。

「はいは~い、遅れてごめんよっ!寒いし早く中入ろうぜ!」

グレイスがそう急かすと、店のドアに手をかけた。
押して開くと、涼しげな鉦の音が、カランカラン…と耳に響いた。

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