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2004/09/22

イリーガル・マインド ・6・

「ところで、クロム。君は今この街に住んでいるのかい?」

一息つくと、おもむろにユイトがクロムに尋ねた。
クロムはそれに反応して、ふと隣に座るユイトを見る。

「ああ、この街で安いホテル借りて、そこに居座ってるよ。昨日はアイリスもそこに泊まったんだ」
「…ふうん」

そう言ってユイトは一瞬怜悧な瞳をした。
名前を出されたアイリスは、それに気付くことなくグレイスとの不毛な舌戦を繰り広げていた。
クロムはそれを見ながら苦笑する。

「それで、どうやって生計を立てているんだい?」
「え?ああ、そうだなー。とりあえずは大体ストリートファイトで稼げてるからな…」
「そうか…。クロム、昔から喧嘩は強かったからね」

懐かしそうな声を出すユイトに、クロムも遠くを見るような瞳をする。
何も知らずに、幸せだったあの頃。
…しかし、それがまやかしだと知ったのも、その頃だった。

「昔からって、3人はいつからの友達なの?」

静かになった2人の間に、突然アイリスが会話を振ってきた。
その問いにはグレイスが答える。

「そうだな…大体10年位前から…か?」
「ずっと一緒だったよね。いつも3人で遊んでた」
「幼馴染、ってやつだよな」

微かに在りし日々の情景を思い出すが、それは郷愁と同時に痛みをも呼び起こす。
それを振り切るように、クロムはわざと明るい声で話を変えた。

「な、お前らは今なにしてるんだ?」

その問いに、しかしユイトたちの反応は鈍かった。

「えーと、ね。今僕たちにはある目的があって…」
「目的?なんだよそれ」
「うーん…」

はっきりしない物言いに、クロムは焦れるが、ユイトが取り繕うように窓の外を見る。

「あ、アイリスちゃん、路上でアクセサリー売ってるよ。君、ああいうの好きじゃない?」
「…ほんとだっ!クロム、行こっ?」
「あー、俺が行くよ。クロムじゃ頼りないからな~」

有無を言わせずグレイスが立ち上がる。

「頼りないってなんだよ!」
「うーん、女の子みたいな顔してるところとか?」
「女顔って言うな!!」

立ち上がろうとするクロムの袖を、ユイトが僅かに引く。
クロムは微かに瞠目した。

「うぅ~?アクセも買ってくれるの?グレイス」
「…君はおねだり上手だね…」

ちっとも収まらないやかましさのまま、アイリスとグレイスは一度店外に出た。
クロムはそれを見送ると、ため息をついてユイトを見やる。
ユイトは優雅に水を口に運んでいた。

「アイリスに聞かれるとまずい話でもあるのか?」

少し拗ねた瞳でユイトを睨むと、ユイトは少しに笑って、クロムの瞳を見た。

「クロム。君に聞いて欲しいことがある」
「…なんだよ」

神妙な顔で言われるが、なんだか妙な感じがする。
何が、と問われても答えることは出来ないが、微かな、違和感。

「僕とグレイスは今、ある計画を立てている」

ユイトは指を組んで、静かに話し始めた。

「それが成功すれば、僕たちは貧しさで、飢えで苦しむことはしなくてすむ。幸福になれるんだ」

目に浮かぶのは、神にさえ見捨てられたと思うほどの冷たい世界。

――ユイト?

「クロム、君も一口乗らないか?」

『いつか、思い知らせてやるんだ』

かつての自分たちが吐いた呪いを、再び耳元で聞いた気がした。

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