イリーガル・マインド ・prologue・
薄暗い部屋に青白い光が照っている。
パソコンの前でその光に照らされた色白の男は、絶え間なく続くカタカタという音の音源となっている。
彼の視線の先には、膨大な量のデータが流れるように展開していた。
叩くキーボードの音にまぎれて、彼の口から言葉が漏れ出ている。
「……最終的には……を……ろす」
本人さえも自覚の無い言葉。
特に意識することもなく、彼はそのデータの確認を進めていた。
背後から、突如別の男の声がした。
「おい、調子はどうだ?そのデータは俺たちを幸福へと導くものなんだからな。大切に扱えよ?」
映し出された影は、その男がずいぶん身長が高いことを物語っている。
その影に、パソコンの前の男は少し苛立ったように応える。
「わかっている」
「ならいいけどさ」
大男のほうは、その棘のある言葉もさして気にした風もなく、暢気に返す。
…と、突然パソコンからエラー音が鳴った。
「ち、しまった!」
パソコンの男が、色の白いその手を机に打ち付けた。
「どうした?」
「データが勝手に移動を始めた!阻止できない…なんだこれは!?」
「なんだって!?おい、早く止めろよ!」
「とんでもないイレギュラーだ…くそ!どうしたらいいんだ!!!」
パソコンの彼は、どうしようもなくなったディスプレイを見詰めて、茫然となった。
その彼の肩を、大男が叩いた。
「おい、これは…」
「…そうか、なるほどね・・・これは、直接生身で行くしかないみたいだね…」
パソコンの彼は、そう呟くと、もう用はないとばかりにパソコンの電源を落とした。
…後には、闇だけが残った。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント